市場の旅の最近のブログ記事

本日で旅行5日目。
眠ってもぜんぜん疲れがとれない。
肩こりが激しく、椅子に座っていると息苦しくなるほどだ。
朝方5時前に起きて、書いた原稿を見直して、書き直しをする。
メールで送り、6時半過ぎ、木津の市場へ。

ホテルからは5分くらい。
曇り空。
今にも雨が落ちてきそうだ。
木津市場は未だに工事中。
あの情緒豊かな、謎めいた市場の風情はすっかりなくなっている。
なぜわからんのだろうね。
便利にすればいいというのでは、ないのだよ。

魚屋をざっと流していく。
境港産の白バイが並んでいる。
これが今年から解禁の鳥取県産なのか、島根県隠岐産なのかが不明だ。
「どんちっちあじ」もある。
浜田沖で巻き網によってとるものなのだが、ただの網もののアジではないのだ。
いちいち脂質(脂ののり)を測っているのですよ、と思わず説明してしまう。
近海ものを置く店にミヤコボラ、シラサエビ(ヨシエビ)、トビアラ(サルエビ)。
大きな活けのイサキが泳いでいる。
そしてなんといってもハモ、ハモ、ハモ。

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そう言えばもうすぐ、半夏生だろう。
タコが少ないようだが大丈夫なんだろうか。
メイタガレイが多いのも大阪らしい。
キチジもエゾバイも1店舗のみ見る。
塩干の店で「さらしくじら」1袋2500円、明石加工のサンマの開き2尾を買う。
ハモの皮を買いたかったが、最低でも500グラムと言われて断念。

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『別虎』で「あんぺい」ありませんか? と聞くと、
「今年は作ってまへんのや」
珍しいものはないが、いいものはてんこ盛りなのが、木津の特徴だろう。
活けもので、買いたくなるものが数知れずある。
考えた末に『とらや商店』で活けのオニオコゼを買う。

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八百屋で八尾のベニタデ、青柚、ワサビ。
朝ご飯は『川上』でまむし。

ホテルには8時前に帰り着く。
ウナギを食べたのに、疲れはいっこうにとれない。
ボクの身体はいかがしたのだろう?
9時過ぎにチェックアウト。
鶴橋を断念して、御堂筋線に乗り込み、広島、島根、大阪の旅はおしまいのおしまい、なのである。
昨日はいささか飲み過ぎた。
これは総てヤマトシジミさんが悪い。
と、しておこう。
まずいホテル飯を食べて、松江魚市場に向かう。
梅雨なのに晴天。
真夏を思わせる日なのだけど、ボクは肩を冷やすといろいろ障害が出るので、長袖を着て、暑くてもひたすら我慢。
大橋川沿いにある松江魚市場は、かれこれ1年振りか。

まずは事務所に入り、場長さん、金村部長、松原さんなどに挨拶。
帽子を忘れてきたので、借りて場内を歩く。

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定置網で上がったという120キロ級のクロマグロが、市場のど真ん中にゴロンと4本。
知り合いが近寄ってきて、「境(境港)じゃ、すごい揚がっとるそうだけん」。
夏のマグロはまずいなんていうが、切り取った尾を見る限り脂がのっていそうだ。
イサキにワカナ(ブリの子)、定置もんのマアジ、大量のスズキ。
島根県人が待っている大目(ホソトビウオ)は1箱だけ。
これはちょっと心配。

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夏が来たなとケンサキイカはちゃんとある。
ボベがある。
どうもベッコウガサらしい。
島根県ではカサガイ類をよく食べる。

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たぶん中海か宍道湖産のシラウオ。

恵曇(えとも 松江市)の『
丸三商 店』さんのマアジの開き、カラフトシシャモを買うつもりでいたら、なんといただく。
あまりにも悪いのでエテガレイ(ソウハチガレイ)を一箱買い求める。
持っていったバッヂを総て配って、市場を後にする。

部屋が明るい。
テレビをつけると6時前。
ちょっとぼんやりして、シャワーを浴びる。
ブログをアップして、ホテルで朝ご飯。
8時過ぎにイッチャンが迎えに来て、浜田漁港仲買人市場へ。
ここで干ものを買い求める。
いつも魚を買っている松下鮮魚店が長期休業しているのが寂しい。
アカムツ、大きなイサキ、アカカマスにオニオコゼ、ヒラメに小目(ツクシトビウオ)。
浜田はシイラはアイゴなどの卵巣・白子を取りだして売ることがある。

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今回はイサキの真子と白子が売られている。
益田の見突き漁のハマグリは1個300グラムを優に超えている。

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まことになんど来ても、この市場の魚は素晴らしい、そして安い。

このまま江津に移動して大田農産で会議。
また浜田に戻り、昼食は市内にある「まめだ」で日替わり定食。
げその天ぷらにところてん、鶏の炊き込みご飯
これでで650円とは安い、そして大満足。

午後からは浜田水産事務所で会議。
ここで試食した「石州ばい(エチュウバイの冷凍剥き身)」の刺身がうまかった。
これは天下一品であろう。

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「本日はぼうずコンニャクを事業仕分けします」と、イッチャンにおどされる。
会議後、同席していたトーボさんなどと分かれて、特急隠岐鳥取行きで松江に向かう。
もうすぐ、玉造温泉駅。
なぜか天気晴朗。
真夏を思わせる陽気だ。
松江には午後5時過ぎに到着。

6時より、県庁そばの、もうすっかり馴染みになってしまった、おでんの「有楽」で県の方と宴会。
名物のおでんがうまい。
そして、これも名物のコロッケに、トビウオのフライのうまいこと。
久しぶりに会う方もいて、楽しい会であった。
その後、まささん、ヤマトシジミさんと合流して「宇宙科学研究所」。
少々、飲み過ぎたようだ。
ホテルに帰ってダウン。

午後9時前の新宿西口。
とにかく夜と人混みが嫌いなので、人人人のなかにいて不愉快極まりなし。
14日、新宿小田急ハルク前から、深夜バスにのる。
ラジオの電池切れを知らないで、持ってきてしまって、『ラジオ深夜便』が聞けない。
深夜バスの中というのはまことに窮屈、しかも本が読めないのでいらいらするのだ。
深夜バスには『ラジオ深夜便』が不可欠なのである。
眠れないまま、15日早朝6時前に広島県福山市福山駅につく。
曇り空。

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山陽本線のホームに上ると、北側に福山城。
水野勝成が築城した城だが、当然目の前の天守は20世紀後半の鉄骨造りだ。
福山駅から岡山行きの電車で東福島駅へ。

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そこから眼と鼻の先に福山地方卸売市場があり、時間が遅くてなにもない市場を見学。
一緒に歩いてくださった市場の管理をしておられる坂本さんにはお世話になった。
そうだ、ここで書いて置きたいのだけど、福山の人はみな親切だ。
道をたずねる、案内してもらう、バスに乗り、ものを聞くに、なんとも懇切丁寧、ありがたかった。
場内に残っていたのが、アコウ(キジハタ)、イシカベリ(テンジクダイ)、ギギ(ヒイラギ)、ハギ(ウマヅラハギ)、コブト(サルエビ)、シラサエビ(ヨシエビ)など。

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マグロの取り扱いが少ないのも、特徴だろう。
福山魚市場が陸送ものも、地物もある、なかなか面白い市場であることだけはわかった。
関連棟などをぐるっと見て、市場飯が食べられる店を探す。
二軒並ぶ食堂、右か左か? 迷った末に『ますみ食堂』に入る。
カウンターに並んだものから「こちの煮つけ」、冷や奴を選び、それに具だくさんのみそ汁、ご飯。
カウンターにいなりずしが置かれていて、これはキツネの耳型だった。
すし飯に具はなく、ごまのみ。

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なんとも満足至極の朝ご飯でお値段は800円なり。

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 胆過市場の裏手にでると、そこが都市モノレール小倉線旦過駅である。
 時刻は11時半を回っている。
 ここから一駅乗ると香春口三萩野(かわらぐちみはぎの)という駅で、ここに黄金市場がある。

 駅から続く横断歩道を南下するとすぐ、大きな道路沿いに「黄金市場」の看板。

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 表から市場内を覗くと、意外に明るい通路が奥に続いているものの、両側はシャッターが目立つ。
 通路沿いに注連縄、御幣が下がっていて、これはいったいなんの意味合いだろうと不思議に思う。

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 通路にいるのはボク一人だ。
 奥に向かって所在なく歩く。
 練り物、揚げ物を売る店、総菜店、そして餅屋さんがあって、なかなか風情がある。
 シャッターが目立つのは本日が水曜日であるためかと改めて思う。
 この練り物屋さんにパン巻きという不思議なものを発見して、一個だけ買って食べてみる。

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 なんと表は食パン、中身は魚のすり身というもので、一様九州では「天ぷら」の一種となるのだろう。
注/西日本では天ぷら、関東では薩摩揚げとなる。
 餅屋のそばの八百屋さん、店頭の野菜の安さに驚く。

 魚屋さんにトラフグの刺身があるのも九州ならではだろう。
 その刺身のうまそうなこと。
 面白いものでは「魚の皮」、「タイラギの小さい方の貝柱、ヒモ」、「えそのすり身」がある。

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「魚の皮」、「タイラギの貝柱以外」、「ふぐのチャンポン」。フグのチャンポンとは皮と身の湯がいたものであるようだ。

 残念ながら、水曜日のために魚の種類は非常に少ない。
 カワハギ、サワラ、マサバ、カサゴ、ブリ幼魚など。

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 この通路を抜けるとアーケード街に出る。
 ここ市場と商店街が一体となっているのだ。
 商店街にも魚屋を2軒みつける。
 ともに水曜日であるために寂しいものなのだけど、片方「豊前海から直送」と書かれている店でビックリするものを発見。
 この話はまた後日書くけれど、一瞬我が目を疑うほどに驚く。
 この店にはサルエビ、ヨシエビ、アカエビ、ガザミ、タイワンガザミ、コイチ、クロホシイシモチ、キチヌ、クロダイ、マガキ、サルボウ、アサリ、コウイカ、マダコ、ヒイラギ、カツオ、イトヨリ、メバル、カサゴ、キダイ、マトウダイ、マコガレイ。

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 これが水曜日でなければもっともっと凄いんだろうな。
 大発見に喜びを感じるとともに、改めて次回を期す。

 うまそうな豆腐屋がある。
 食堂に、味噌屋、海苔乾物、洋品店、花屋。
 真っ赤な暖簾の下がったラーメン・チャンポンの店で、市場飯。

 北九州の市場をできるだけたくさん見たいわけで、時間がないのが残念だ。
 慌ただしく歩きながら、野菜、惣菜、水産物の値段を見るに、やはり関東などと比べると驚くほど安い。
 とくに総菜類は種類も多く、豆類が多いのも特徴かも。

 都市の中心部にありながら規模も大きく、食材も豊富で、しかも値段が安い。
 黄金市場はまことに魅力溢れる市場である。

2008年12月11日
北九州市にぎわいづくり懇話会
http://lets-city.jp/konwakai/index.html
黄金市場 北九州市小倉区黄金1
http://www.koganeichiba.com/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

 久しぶりの沼津行、わくわくするかというと、全然しない。
 何しろ今回の目的は「仕事」であって、オマケに底引きが休漁とわかっているのだから。
 それよりも久しぶりの深夜特急(深夜にクルマを走らせる)方がどきどきする。
 ボクは基本的にクルマも、クルマを運転することも大嫌いなのである。
「クルマなんかない方がいい」

 朝3時前、国道16号を南下する。
 NHKラジオ深夜便から森進一の歌声が聞こえてくる。
 思わず消そうかと思ったが、ほかに聞くアテもなく、そのまま聞き流す。
 ところが思ったよりもいいのである。
 歌に引かれると言うよりも1970年から1980年に、ボクがその時代まったく聞かなかった音楽に懐かしさを覚える。
 例えば万博であったり、紅白の主要なものが演歌であったり。
 深夜の国道にくぐもったような森進一の声が、過去を思い出させてくれる。
 暖房利きすぎの車内で、うすらぼんやり国道を南下していたら橋本で129号線に入りそこなう。
 気がついたら町田も相模大野も通り過ぎてしまっている。
 悔しい思いをしながらもどり厚木から東名にのる。
 午前4時55分にインターを出たら、沼津インター付近がすっかり変貌している。
 いったいこのあたりはどのようになるのか、想像が出来ない。
 途中駅前に右折、沼津港にまっすぐ進む。
 午前5時を回っている。
 市場はすっかり活気づいていて、人の波をよけながらクルマを止める。
 さてほとんど1年振りの沼津ではないだろうか?

 慌ただしく「イーノ」(沼津魚市場新場)を目差すとき、帽子を忘れていることに気づく。
 本当に今年はやることなすこと、こんなことだらけだ。

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 「イーノ」の広い空間に人はまばら、それ以上に魚がない。
 荒天続きで地物が少なく、陸送物が目立つ。
 原釜(福島県相馬市)あたりからメスガニ(ズワイガニ)、ネジボラ。

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伊豆はその昔、イルカ漁が盛んだった。その名残で未だにイルカを食べる習慣が残る。このような食文化も絶やしたくないものだ

 岩手県からはリクゼンイルカ(イシイルカ?)。
 ブリも小ムツもよそからきたものばかり。
 そこにキンメダイの紅があってほっとする。
 ヤリイカの雄が並び、釣りもののタチウオ、のどくろ(ユメカサゴ)。
 アカムツ、アマダイ(アカアマダイ)がまとまっていある。

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 ただ、この水揚げの少ない時期に、高騰するのが目に見えているわけで、競り人も回りを何気なく周回しているのみ。
 ミズイカ(アオリイカ)、ジンドウイカがあってコウイカ類がないのが不思議だ。
 結局コウイカは3ばい、しかも最後に戸田からのものがきたのだけどウスベニコウイカだろう。
 マナマコも活けでたっぷりきていて、「ナマコをみると冬なんだな」と改めて思うのだ。

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 沼津のもうひとつのノドクロ(チゴダラ)があって、ギスがあり、マトウダイ、アラ、スズキ、ヒラスズキ、ブダイ、アカラサ(ヒメコダイ)、フサカサゴ、オニカサゴ(イズカサゴ)、カサゴ(ウッカリカサゴ)、カサゴ、エビスダイがある。
 オオメハタがまとまってあるが、ナガオオメ、ワキヤハタは混ざっていない。

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 水槽には大量の活けのヤリイカ、カサゴ類、ヒラメ、カワハギ。
 担当の山田さんと立ち話。
「やっぱりカワハギがいちまんうまそうだな」
 少し離れて養殖もののクエ。

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 やがて佐政水産の青木修一さんがやって来た。
「これじゃ仕方ありませんね。揃える(注文に応じる)のが大変です」

 狩野川の川ガニ(モクズガニ)があって大型のウナギがきている。
 丸々太った天然もので脂がのっていそうだ。

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 ひととおり見て、キンメダイの場所にもどると大きなメカジキがおかれていた。
「なぜ、ここにあるの」
 担当者に聞くと、
「キンメ釣っててかかったんだって、二人乗っていたからなんとか上がったっていってたな」
 ワタをだし、ツノを切り落として121キロとはでかい。
「これならたいした儲けになっただろうな」
「違うらしいよ。キンメを釣り続けた方がよかったんじゃない」

 荷さばき場を除くと菊地利雄さんが忙しそうに段ボールを運んでいる。
 沼津の魚の魅力が徐々に知れ渡っていて、青木修一さん(佐政水産)や菊地利雄さん(菊貞・山丁)さんは大忙し。
 ボクの個人的意見ではあるが、日本広し、漁港は数あれど、沼津ほど多彩で、珍しい魚貝類の上がるところはまずないだろう。
 沼津の魚貝類がもっともっと値上がりしそうで怖くなる。

 さて7時半まで密かに島根県水産アドバイザーーとしての仕事をこなす。
 そして8時近くになって、地元の甲殻類学者飯塚栄一さんがやってくる。
 これまたいつもの「たか嶋」で、いつもの朝ずしを食べながら、甲殻類の話で盛り上がる。

 9時過ぎに青木修一さんにお願いしていた魚を受け取り、志下で日本酒を買い込んでから沼津を後にする。
 上り東名高速にクルマは少なく、「やはり不況なのかな」なんて思っていたら、クルマのメーターにエンプティマークが点灯している。
 いつから点っていたものか、不安をつのらせながら、危機一髪で厚木を出る。

●沼津の魚貝類に商業的に興味のある方はご連絡下さい。
我がサイトにメールアドレスがあります。
基本的に商用もしくは事務的なもの以外のメールは受け付けていません。
魚貝類に感心のあるかたなどは掲示板へ
http://csi.or.tv/tsukiji/kb/rb.cgi 
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

 旦過市場に来た目的のひとつが「いわしのぬかみそだき」だ。
 市場内の食堂に入って食べるのが最良の方法だろう。
 でも本当にうまい「いわしのぬかみそだき」が食べられるんだろうか?
 踏ん切りがつかないまま、市場を歩いていると、懐かしいケースの並んだお菓子屋さんが目に付いた。

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 ボクが子供の頃(1960年代)、お小遣い10円を持たされてお菓子を買い食いする。
 その頃のお菓子の売り方というのが量り売りだったのだ。
 「オバチャンこれ」とお願いすると計りに乗せて10円分か5円分を白い紙袋に入れてくれる。
 そのままのガラスのケースがここにある。
 このお菓子屋さんのお母さんがなんとも親切な方であった。
 「このあたりに、ぬかみそだき食べさせてくれるところありません」ときくと、「たのんであげるから来なさい」と連れて行ってくれたのが『宇佐美』という店だった。

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 この店、[100年床ぬかみそだき]と書かれた看板が大仰なので敢えて通り過ぎたのだった、
 でも出てきた女将さんもいたって親切、親しみやすく、「いいですよ」と、いわしのぬかみそだきを発泡トレイにのせて、割り箸までいただいた。

 さて初めて食べる、“いわしのぬかみそだき”は思った以上にぬかみそが感じられないものだった。

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 醤油の甘辛い味付けで、確かにそこに糠の、ざらつきがあるものの酸味も糠味噌臭さもない。
 むしろイワシの煮つけに濃くをつけたようなもの。
 立ちん坊で“ぬかみそだき”を食べていてもつまらない。
 振り向くと酒屋があって、どうやら立ち飲みができそうだ。
 『宇佐美』の女将さんに、「これ持ったままあそこに入ってお酒飲んでもいいでしょうかね?」。
「いいんじゃないですか。聞いてあげましょうか」
 聞いて頂いて、入っていったのが、『宇佐美』の通路反対側にある『赤壁酒店』。
 奥が立ち飲みスペースになっており、ここでコップ酒で“いわしのぬかみそだき”を食べる。
 まことに旦過市場の人は優しいね。

 さて、北九州市小倉は、ぬかみそ漬け作りのさかんなところ。
 ぬかみそのことを古くは「糂汰漬け(じんだづけ)」と呼んでいたようだ。
 「糂汰」という言葉の歴史は「ぬかみそ」という言葉以上に古いものらしく、小倉の「ぬかみそ文化」の歴史はいやが上にも古いことがわかる。
 ぬかみそで野菜などを煮た汁を「糂汰汁」、魚を煮て「糂汰だき」。
 “いわしのぬかみそだき”は「いわしの糂汰だき」だということになる。
 ●詳しくは「ぬかみそ文化交流会」へ

 さて、市場の旅は続くのである。
 旦過市場を軽くもう一回り。
 『大學堂』という不思議な空間を見つけた。
 そこにはコタツがあり、女子大生が二人。
「今日は法律相談をやってます」
 なかなか明るい。

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 ここは北九州市立大学が運営しているもので、大学と一般とのふれあいの場所として面白そうだ。

 こんなところで北九州のことなど聞いてみたい気もするが、時間のない旅なので、慌ただしくモノレール旦過駅を目差す。

●旦過市場歩き終わり

北九州市にぎわいづくり懇話会
http://lets-city.jp/konwakai/index.html
旦過市場
http://www.tangaichiba.jp/
ぬかみそ文化交流会
http://blog.livedoor.jp/jindaoyaji/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

 北九州市役所を出て、また橋を対岸に渡るとほどなく旦過市場が見えてきた。
 とても市場とは思えない入口で、文字だけが目印と言ってもいい。
 手前にあるのが『丸和』とあり、スーパーらしい。
 横断歩道をわたって市場に入っていく。

 この項は北九州の旅としているが、政令指定都市で百万近い人口がある。
 例えば島根県とか徳島県からすると県の人口よりも、北九州市の人口の方が多いのだ。
 その大都市の市街地なのだから林立するビル、街を歩く人の多さなど、とても地方に来ているという思いが浮かんでこない。

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 市場に入ると、途端に有機的な匂いがしてくる。
 揚げ物、ぬかみそ、醤油、そして水産物などが混ざった、うまそうな匂いだ。
 思った以上に賑やかで、松本清張が働いていたことがあるという、ちょっと暗いイメージなんてどこにも感じられない。
 魚屋があって、その先にはクジラの専門店。
 九州北部佐賀県呼子では江戸時代以来のクジラ漁が行われていた。
 とったクジラは塩漬けになって九州一円に流通していたわけで、九州北部でのクジラの歴史は古い。
 クジラを売る店が市場の入り口近くにあるというのが、その点でも面白い。

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 かまぼこ屋があり、今回の目的のひとつである「ぬかみそだき」の看板が見られる。
 魚屋は非常に多い。
 店頭に並ぶ鮮魚の種類はそれほど多くないが、鮮度はいい。
 水曜日で卸売市場が休みなのに、これだけ見事な魚があるというのにも驚かされる。
 サンマ、タラバガニ、ブリなどは陸送もの。
 「ひらす(ヒラマサ)」、ウスバハギ、アマダイなどにマダイ、メダイは九州各地近場からだろう。

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 特徴的なのが近海の小魚類。
 ヒイラギ、クラカケトラギス、メバル、マコガレイ、カサゴ、ショウサイフグ、コモンフグ、トラフグ、ヒラスズキ、アオハタ、イシガキダイ。
 ミルクイ、タイラギ、マダコ、アカガイ、サルボウ、ハマグリ(?)。
 ヨシエビ、アカエビ(トラエビであるかも?)、クルマエビ、ガザミ。

「今日は市場が休みだから、魚が少ない」
 どの店でもこんな断りを言われたが、関東からきた身には、これでも充分魅力的だ。
 カワハギは皮を剥いだ状態である。
 豊前海産と書かれたカキや小魚類がある。
 北九州では「豊前海産」というのは新鮮であることのあかしなのだろうか。
 一軒の店先にカツオを醤油漬けにしたものが売られていた。
 これも面白い。
 シジミは山口県産が多かった。
 島根県からは赤ばい(エゾボラモドキ)が来ているのだけどやけに安い。

 ウナギ屋があり、果物屋、漬物店に果物屋、総菜店も多々ある。

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お総菜店が多いのも魅力的だ

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 中央の通りを抜けてそろそろ出口というところに食堂があった。
 その手前を右に折れると川に出てしまう。

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 この川が大正時代には船着き場ができるほどの水量を誇っていた神嶽川だろうか。
 旦過市場は大正時代、船着き場に揚がるイワシを、売ることで出来たものだという。
 今では小さな川であり、そこに市場の建物がせり出すように建っている。

 その通りを戻り、中央の通路を通り過ぎると、途端に人通りが絶えて、それに抗すかのように万国旗が頭上に交叉する。
 人通りがたえて、突然時代が昭和30年代に後戻りしたような錯覚を思える。

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 それだけに万国旗の垂れ下がっているのが不思議な雰囲気だ。
 右手に古い看板が並び掲げられている乾物屋。
 棒鱈、焼きあご(ホソトビウオの焼き干し)があるのが印象的。
 瀬戸内海産のいりこ(カタクチイワシの煮干し)は上物である。
 先に進むと、また魚屋さんが並んでいる。
 表通りよりも広い店舗で品揃えも豊富だ。
 肉屋、ホルモン専門店。

 旅の途中ではあるが、買ってみたいものが無数にある。
 我慢に我慢を重ねる胆過市場歩きだ。

●旦過市場歩き続く

北九州市にぎわいづくり懇話会
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旦過市場
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

 昨年、フリーライターのエンテツ(遠藤哲夫)さんから『雲のうえ』の取材で北九州にいったことをお聞きした。
 『雲のうえ』は最近話題のフリーマガジンで、初めて見たのが今はなき神保町書肆アクセスである。
 地方自治体が出しているものなのに素晴らしい編集で、なにより文章がいい。
 エンテツさんの特集が見たくて閉店する直前のアクセスで『雲のうえ 5号 めし大盛りにしとって』を手に入れた。
 だからどうしても書肆アクセスの閉店と『雲のうえ』が重なってしまう。

 さて、エンテツさんの文章を読み、ボクも北九州に行きたくなっていたのだ。
 北九州市で浮かぶことといったら工業都市、鉄とコンクリートで無機質なものだった。
 それが『雲のうえ』を読むことでがらりと変わる。
 街歩きが好きで堪らないボクにとって、なんて魅力的な都市なんだろう。
 まして北九州市には無数の市場が点在するという。

 あれから一年以上が経っている。
 時刻表を買い求めて、北九州小倉までたどり着く方法をいろいろ考える。
 値段が安く、しかも早朝に到着する方法。
 なにしろ前日の夜まで仕事なのだから、深夜バスで目差すのがいちばんいい。
 ただ本当にバスの時刻までに仕事が終わるのかどうか、わからない上に値段を比較すると新幹線との差額が小さいのだ。
 例えば徳島に帰郷するならバス利用とJRでは半額、空路だと3分の一しかしない。
 ところが九州だと新幹線とは25パーセントの違いしかない。
 最近の激務からすると深夜バスの10時間というのは無理としかいいようがない。
 決まらないまま、火曜日は深夜まで仕事をした。

 水曜日、早朝4時過ぎに我が家を出る。
 新幹線博多行き6時の始発に飛び乗って一路西に。
 新神戸を過ぎる頃から南の車窓から見える景色が霧に白くつつまれてくる。
 関門トンネルはあっけなく、なんのアナウンスもなくくぐり抜けて、小倉側に出て海側を見るとこれまた霧で白い。
 小倉駅到着が午前9時半。

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 駅から降るエスカレーター、急ぐ人は右側、すなわち東京と同じなのを確認して駅を南に出る。
 駅から続くモノレールの線路(?)、向かって左側に大きなデパート、右にはごみごみした商店街があるようだ。
 市役所を駅の地図で確認して、とにかく大体の見当で歩く。
 賑やかな商店街、年末ジャンボ宝くじを売っていたので、記念に買う。

 通りを抜けるとほどなく川に行き当たる。
 ちょうどそこが橋のたもと。
 井筒屋というデパート(?)の警備員の方に市役所の場所をたずねる。
「橋の向こうに、城が見えますでしょ、その隣にある黒いビル、あれが市役所です」

 橋を渡ると不思議な形のビルがあって、今から噴水が始まるから川のそばにいないように、といったアナウンスが流れる。
 何気なく対岸を見ると川縁で魚釣りをしている人が竿を立てている。
 水面から魚が跳ね上がったのだけど、獲物はなんだろう。

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 右手に小倉城。
 小倉藩15万石の城なのでなかなか立派だが、実は1959年に復元されたもの。
 藩主小笠原家というのは鎌倉時代以来の名家。
 礼法「小笠原流」でも有名であるけれど、幕末の第二次長州征伐での惨めな負け戦の方が印象深い。

 市役所、「にぎわいづくり企画課」をお尋ねし、同課の桑本さんに市内市場の情報をお聞きする。
 しかも市場の地図、ほとんど在庫のない『雲のうえ 二 おーい、市場!』までわけて頂く。
 北九州市役所ならびに桑本さんに感謝。

 さて、晴天で雲一つない。
 今日は市場をいくつ見て回れるのだろう。
 
北九州市にぎわいづくり懇話会
http://lets-city.jp/konwakai/index.html
旦過市場
http://www.tangaichiba.jp/

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