湖沼・汽水域・漁・港の最近のブログ記事

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 鳥取市の西にある広大な湖山池は不思議な景観をしている。
 池の周りを走っていると、まるで深い湾を見ているよう。
 それもそのはずで、その昔、この辺りは砂地に島が点在する海辺だったのだ。

 さて今回湖山池を案内して頂いたのは鳥取市議会議員の児山良さんと、岩美町浜勝商店の十九百(つづお)さん。
 ボクが湖山池を知るきっかけとなったのが、江戸時代から続く、この地独特の石がま(いじがま)漁である。
 湖の一角に石積みを作る。
 これが冬季になると魚などの潜む場所となるのだ。
 寒くなって石積みに集まってきた魚(コイ、フナなど)を、一角に設けた空間(胴函)」に竹筒などで追い込みとらえるもの。
 ようするに石造りの定置網のようなものともいえそうだ。

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今でも使われている石がま。石の間に竹などを差し込み、中央手前の胴函に追い込む

 この漁のことは知っていたものの、鳥取県のどこで行われていたのか、よくわかっていなかった。
 鳥取県の日本海側には東郷湖という湖があって、明らかにボクは間違えて覚えていた。
 その間違いを指摘するとともに、湖山池に案内してくれ、児島さんに紹介してくれたのが十九百さんなのだ。
 考えてみると十九百さんという人、会えば会うほど、ボクにたくさんにことを教えてくれる。
 このような点からも、深く深く感謝したい。

 湖山池は貴重な伝統漁法が残るだけでなく、ヤマトシジミ、シラウオなどの漁場でもある。
 もちろん冬季のコイやフナなども鳥取市になくてはならない味覚なのだろう。
 ボクはこのように生活に密着した水域というのに非常に惹かれる。
 自然保護などというとき、この生活感がまったく感じられないことがある。
 例えば世界に名を馳せるグリーンピースとか、三番瀬周辺の団体とか。
 この方達はまるで霞を食べているかのごとき、発言をする。
 発言に生活者としての観念が欠如している。
 今、もっとも脅威にさらされているのが、もともと生活に密着していた水域であるのに、そこで暮らす人のことを全然省みないのは多いにおかしいのだ。

 さて、話を湖山池にもどさないといけない。
 湖山池の東方を流れているのが山陰の大河ともいえそうな千代川(せんだいがわ)である。
 この河口にあるのが賀露漁港(鳥取港)。
 港の改修が行われるとともに、もともと河口と繋がっていた水路を、千代川の上流につけ替えてしまったのだ。
 実をいうとシラウオもヤマトシジミも汽水域に生息するもの。
 当然、塩分濃度の変化で多大な被害を被っている。
 その上、湖山池の水質まで悪化してしまっていて、今水面に繁殖増大しているのがヒシ(菱)なのだ。
 シラウオもヤマトシジミも激減して、湖山池漁業協同組合の漁業者のみなさんも疲弊している。

「増えているのはヒシだけなんです。ヒシって知ってますか? この辺じゃよく食べるんですけど、おいしいんです」

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湖山池産のヒシの実

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ヒシの実の食べ方を児島さんに教えてもらっているところ。手前が児島さん、右側が十九百さん

 この湖山池産のヒシの実は忍者が使う撒きビシのような形だ。
 それもそのはずでその昔、忍者などはヒシの実を使って追っ手の来るのをまいたのだ(?)。
 ここで注釈がいるのだけど、その昔『隠密剣士』なんて番組があって霧の遁兵衛などから懐から鉄製の「撒きビシ」を投げるのだけど、その原型が植物のヒシということだ。
 ヒシの実は栗のようにほっこりしていてうまい。
 うまいけど湖山池の漁師さん達の暮らしの支えとはならないのだ。

 湖山池をぐるっとまわって、石がま(いじがま)のある場所に歩いていく。
 山際に民家、道を隔てて田んぼがあって、池に面している。
 池面は静かで波もなく、微かに鳥の声がするだけだ。
 やがて見えてきたのが植物の生い茂った島ともいえるもので、これが今は使われなくなった「石がま」である。

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今では使われなくなった「石がま」

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人と比べると大きさがわかるはず

「石がまの手入れは大変なんです。ちょっと放っておくと草だらけになってしまいます」
 池にそって歩いていると、護岸から2メートルほど離れて石組みの島がある。
「去年の暮れに漁をやったらいっぱいコイやフナが入ったんです」
 児島さんの説明では、「石がま漁にはたくさん人手と、維持するのにまた多大な人力を必要とする」のだという。

 我がサイトでもなんとかして湖山池の漁業者のかたの支援をしたい。
 またこの「石がま」の維持に協力したいと思う。
 今期のヤマトシジミ、シラウオ漁はいかがなものだろう。
 また湖山池のヒシの実を食べてみたい、扱ってみたいと思う業者の方の支援も請う。
 
児島良
http://www.kojimaryo.com/cgi-bin/index.cgi?contents=profile
湖山池研究所(ここに漁業者の情報がない。不思議だ)
http://www.city.tottori.lg.jp/koyamaike/index.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

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