2009年1月18日の沼津魚市場便り

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 久しぶりの沼津行、わくわくするかというと、全然しない。
 何しろ今回の目的は「仕事」であって、オマケに底引きが休漁とわかっているのだから。
 それよりも久しぶりの深夜特急(深夜にクルマを走らせる)方がどきどきする。
 ボクは基本的にクルマも、クルマを運転することも大嫌いなのである。
「クルマなんかない方がいい」

 朝3時前、国道16号を南下する。
 NHKラジオ深夜便から森進一の歌声が聞こえてくる。
 思わず消そうかと思ったが、ほかに聞くアテもなく、そのまま聞き流す。
 ところが思ったよりもいいのである。
 歌に引かれると言うよりも1970年から1980年に、ボクがその時代まったく聞かなかった音楽に懐かしさを覚える。
 例えば万博であったり、紅白の主要なものが演歌であったり。
 深夜の国道にくぐもったような森進一の声が、過去を思い出させてくれる。
 暖房利きすぎの車内で、うすらぼんやり国道を南下していたら橋本で129号線に入りそこなう。
 気がついたら町田も相模大野も通り過ぎてしまっている。
 悔しい思いをしながらもどり厚木から東名にのる。
 午前4時55分にインターを出たら、沼津インター付近がすっかり変貌している。
 いったいこのあたりはどのようになるのか、想像が出来ない。
 途中駅前に右折、沼津港にまっすぐ進む。
 午前5時を回っている。
 市場はすっかり活気づいていて、人の波をよけながらクルマを止める。
 さてほとんど1年振りの沼津ではないだろうか?

 慌ただしく「イーノ」(沼津魚市場新場)を目差すとき、帽子を忘れていることに気づく。
 本当に今年はやることなすこと、こんなことだらけだ。

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 「イーノ」の広い空間に人はまばら、それ以上に魚がない。
 荒天続きで地物が少なく、陸送物が目立つ。
 原釜(福島県相馬市)あたりからメスガニ(ズワイガニ)、ネジボラ。

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伊豆はその昔、イルカ漁が盛んだった。その名残で未だにイルカを食べる習慣が残る。このような食文化も絶やしたくないものだ

 岩手県からはリクゼンイルカ(イシイルカ?)。
 ブリも小ムツもよそからきたものばかり。
 そこにキンメダイの紅があってほっとする。
 ヤリイカの雄が並び、釣りもののタチウオ、のどくろ(ユメカサゴ)。
 アカムツ、アマダイ(アカアマダイ)がまとまっていある。

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 ただ、この水揚げの少ない時期に、高騰するのが目に見えているわけで、競り人も回りを何気なく周回しているのみ。
 ミズイカ(アオリイカ)、ジンドウイカがあってコウイカ類がないのが不思議だ。
 結局コウイカは3ばい、しかも最後に戸田からのものがきたのだけどウスベニコウイカだろう。
 マナマコも活けでたっぷりきていて、「ナマコをみると冬なんだな」と改めて思うのだ。

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 沼津のもうひとつのノドクロ(チゴダラ)があって、ギスがあり、マトウダイ、アラ、スズキ、ヒラスズキ、ブダイ、アカラサ(ヒメコダイ)、フサカサゴ、オニカサゴ(イズカサゴ)、カサゴ(ウッカリカサゴ)、カサゴ、エビスダイがある。
 オオメハタがまとまってあるが、ナガオオメ、ワキヤハタは混ざっていない。

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 水槽には大量の活けのヤリイカ、カサゴ類、ヒラメ、カワハギ。
 担当の山田さんと立ち話。
「やっぱりカワハギがいちまんうまそうだな」
 少し離れて養殖もののクエ。

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 やがて佐政水産の青木修一さんがやって来た。
「これじゃ仕方ありませんね。揃える(注文に応じる)のが大変です」

 狩野川の川ガニ(モクズガニ)があって大型のウナギがきている。
 丸々太った天然もので脂がのっていそうだ。

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 ひととおり見て、キンメダイの場所にもどると大きなメカジキがおかれていた。
「なぜ、ここにあるの」
 担当者に聞くと、
「キンメ釣っててかかったんだって、二人乗っていたからなんとか上がったっていってたな」
 ワタをだし、ツノを切り落として121キロとはでかい。
「これならたいした儲けになっただろうな」
「違うらしいよ。キンメを釣り続けた方がよかったんじゃない」

 荷さばき場を除くと菊地利雄さんが忙しそうに段ボールを運んでいる。
 沼津の魚の魅力が徐々に知れ渡っていて、青木修一さん(佐政水産)や菊地利雄さん(菊貞・山丁)さんは大忙し。
 ボクの個人的意見ではあるが、日本広し、漁港は数あれど、沼津ほど多彩で、珍しい魚貝類の上がるところはまずないだろう。
 沼津の魚貝類がもっともっと値上がりしそうで怖くなる。

 さて7時半まで密かに島根県水産アドバイザーーとしての仕事をこなす。
 そして8時近くになって、地元の甲殻類学者飯塚栄一さんがやってくる。
 これまたいつもの「たか嶋」で、いつもの朝ずしを食べながら、甲殻類の話で盛り上がる。

 9時過ぎに青木修一さんにお願いしていた魚を受け取り、志下で日本酒を買い込んでから沼津を後にする。
 上り東名高速にクルマは少なく、「やはり不況なのかな」なんて思っていたら、クルマのメーターにエンプティマークが点灯している。
 いつから点っていたものか、不安をつのらせながら、危機一髪で厚木を出る。

●沼津の魚貝類に商業的に興味のある方はご連絡下さい。
我がサイトにメールアドレスがあります。
基本的に商用もしくは事務的なもの以外のメールは受け付けていません。
魚貝類に感心のあるかたなどは掲示板へ
http://csi.or.tv/tsukiji/kb/rb.cgi 
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


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このページは、管理人が2009年1月19日 10:13に書いたブログ記事です。

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