北九州市役所を出て、また橋を対岸に渡るとほどなく旦過市場が見えてきた。
とても市場とは思えない入口で、文字だけが目印と言ってもいい。
手前にあるのが『丸和』とあり、スーパーらしい。
横断歩道をわたって市場に入っていく。
この項は北九州の旅としているが、政令指定都市で百万近い人口がある。
例えば島根県とか徳島県からすると県の人口よりも、北九州市の人口の方が多いのだ。
その大都市の市街地なのだから林立するビル、街を歩く人の多さなど、とても地方に来ているという思いが浮かんでこない。
市場に入ると、途端に有機的な匂いがしてくる。
揚げ物、ぬかみそ、醤油、そして水産物などが混ざった、うまそうな匂いだ。
思った以上に賑やかで、松本清張が働いていたことがあるという、ちょっと暗いイメージなんてどこにも感じられない。
魚屋があって、その先にはクジラの専門店。
九州北部佐賀県呼子では江戸時代以来のクジラ漁が行われていた。
とったクジラは塩漬けになって九州一円に流通していたわけで、九州北部でのクジラの歴史は古い。
クジラを売る店が市場の入り口近くにあるというのが、その点でも面白い。
かまぼこ屋があり、今回の目的のひとつである「ぬかみそだき」の看板が見られる。
魚屋は非常に多い。
店頭に並ぶ鮮魚の種類はそれほど多くないが、鮮度はいい。
水曜日で卸売市場が休みなのに、これだけ見事な魚があるというのにも驚かされる。
サンマ、タラバガニ、ブリなどは陸送もの。
「ひらす(ヒラマサ)」、ウスバハギ、アマダイなどにマダイ、メダイは九州各地近場からだろう。
特徴的なのが近海の小魚類。
ヒイラギ、クラカケトラギス、メバル、マコガレイ、カサゴ、ショウサイフグ、コモンフグ、トラフグ、ヒラスズキ、アオハタ、イシガキダイ。
ミルクイ、タイラギ、マダコ、アカガイ、サルボウ、ハマグリ(?)。
ヨシエビ、アカエビ(トラエビであるかも?)、クルマエビ、ガザミ。
「今日は市場が休みだから、魚が少ない」
どの店でもこんな断りを言われたが、関東からきた身には、これでも充分魅力的だ。
カワハギは皮を剥いだ状態である。
豊前海産と書かれたカキや小魚類がある。
北九州では「豊前海産」というのは新鮮であることのあかしなのだろうか。
一軒の店先にカツオを醤油漬けにしたものが売られていた。
これも面白い。
シジミは山口県産が多かった。
島根県からは赤ばい(エゾボラモドキ)が来ているのだけどやけに安い。
ウナギ屋があり、果物屋、漬物店に果物屋、総菜店も多々ある。
中央の通りを抜けてそろそろ出口というところに食堂があった。
その手前を右に折れると川に出てしまう。
この川が大正時代には船着き場ができるほどの水量を誇っていた神嶽川だろうか。
旦過市場は大正時代、船着き場に揚がるイワシを、売ることで出来たものだという。
今では小さな川であり、そこに市場の建物がせり出すように建っている。
その通りを戻り、中央の通路を通り過ぎると、途端に人通りが絶えて、それに抗すかのように万国旗が頭上に交叉する。
人通りがたえて、突然時代が昭和30年代に後戻りしたような錯覚を思える。
それだけに万国旗の垂れ下がっているのが不思議な雰囲気だ。
右手に古い看板が並び掲げられている乾物屋。
棒鱈、焼きあご(ホソトビウオの焼き干し)があるのが印象的。
瀬戸内海産のいりこ(カタクチイワシの煮干し)は上物である。
先に進むと、また魚屋さんが並んでいる。
表通りよりも広い店舗で品揃えも豊富だ。
肉屋、ホルモン専門店。
旅の途中ではあるが、買ってみたいものが無数にある。
我慢に我慢を重ねる胆過市場歩きだ。
●旦過市場歩き続く
北九州市にぎわいづくり懇話会
http://lets-city.jp/konwakai/index.html
旦過市場
http://www.tangaichiba.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/
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北九州へ市場旅 01 小倉・旦過市場後編
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