市場めし・港めし: 2009年2月アーカイブ

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 島根県浜田市にある浜田漁港は国内でも有数の水揚げ港である。
 巻き網、底曳網、一本釣り、磯漁、刺し網など様々な漁があるし、その漁は西日本でも屈指のものだろう。
 そんなに大きな港なら、さぞやうまい飯屋があるのではないか? きっと誰もが思うに違いない。
 ところが残念ながら、「市場でごはん」という楽しみはたった一軒『MESAMASHI』だけしか望めない。

 JFしまね浜田支所前に、早朝にトラックが到着する。
 これが『MESAMASHI』の正体だ。
 なかから年齢不詳のお姉さんが出てきて、トラック後部の扉をばたりばたりと開ける。
 小さなテーブルやバケツなどを出した途端に、仲買さんやJFの職員さんがわっせわっせと駆けつけるのだ。
 なぜ駆けつけなければならないか? はトラックの前を見るとすぐにわかる。
 手前の机の上におでん、そしてトラックの手前側にお握りいろいろ、奥のトラックの荷台にあたる部分が厨房になっている。
 問題はこの手前にあるお握りとおでんだろう。
 早くしないと好みのおでんダネ、おにぎりがなくなってしまうのだ。
 さて中にいるのは、きりりとしたお姉さんであって、こっちが慌ただしく注文したりすると、「待ってくださいな」なんてピシャリとくる。
 この言い方がなんともほどよく、また有無を言わさぬものであるのがいい。

 さて、ほとんどの常連さんは、まずはうどんかそば、そしてお握り1個か2個。
 もの足りない若い衆はこれにおでんを2、3個といったところだ。
 ラーメン、チャンポンもあるが、いちばんの売れ筋はうどんに思える。
 慌ただしい市場での飯だから、うどんのなかにいきなりおにぎりを放り込み、そのまま麺と崩れたおにぎりをズルサラズルサラとかきこむのが浜田流。
 もしくはうどん、そばをとり、出来るまで、おでんを皿に入れる。
 つゆを少し入れて、そこにおにぎりを放り込んで食べている人も多し。
 どうやら浜田人は汁っぽいのが好きらしい。

 『MESAMASHI』の品書きのなかでボクが一押しなのが肉うどん450円だ。
 過去にラーメンを食べているが、もう10歳若ければ好きだろうな、という味であった。
 今回はなに食べようか?
 ちなみに浜田でそばを食べる気になれない。
 ボクは関ヶ原を超えると、うどんしか食べないことにしている。
 ましてや食堂の麺類となると、西日本でそばはいやだな。
 でも品書きの下段にあるチャンポン650円(実は700円)が目をとらえて離さないのだ。
 これは11月に北九州に行ったため。
 九州では本来ラーメンではなくチャンポンの大陸(世界的には島だけど)なのだと確信した。
 じゃあ山陰はどうなのだろう、チャンポンの大陸の九州からそんなに遠くはないのだ。
 それでむらむらと「チャンポンください」。
 脇で体重が100キロオーバーになってしまっているヤマトシジミさんまで「私も」なのだ。
 出来上がるまでにおでんの牛すじ、ごぼう天におにぎりひとつ。
 おにぎりはおでんの汁に少しだけ浸している。

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 この浜田流おでんおにぎり融合的食べ方がいい。
 だいたい『MESAMASHI』のおでんがうまいし、当然ながら汁だってうまい。
 そのおでん汁を毛細管現象によって適度に吸い取ったおにぎりが、不思議なんだけど魅力的な味になっている。
 やっとチャンポンがやってきた。

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 これは確かにチャンポンなのだけど、スープに豚骨の臭いがある。
 チャンポンの概念からは遠く、むしろタンメンに近いといったもの。
 勢いよく食べ終わったものの、ボクとしては『MESAMASHI』ではうどんに決めた方が最良の選択のようだ。
 さて、早朝から市場歩きして、これでも腹に隙間がある。
 おでんの鍋の蓋を開けて、厚揚げと卵を追加して、やっと人心地ついたのであった。

 腹の虫がをなだめて、いざ浜田魚商売マーケットでうまい魚でも買おうではないか!

2009年2月11日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 築地場内で昔ながらの商売を、基本的なあり方をもっとも忠実に、ガンコに続けている店が年々減少しているように思う。
 なにしろ築地場内では定食で1000円前後もする。
 そこに奴でもつけると1500円なんてことになりかねない。
 いい魚を使っているとか、場内の管理費がかかるからとか、いろいろ理由はあるだろうけど、最近廉価となってきた“銀座でご飯”となんら変わらない。
 しかも、出てくるものがたっぷりして充実したものなのか? 上等か? というと、まったくその逆だ。
 しかも、しかもかなりまずい店が多々ある。
 この築地周辺の飯のまずさを、より強く感じたのは大阪の市場に行くことが多くなってからだ。
 木津のうどんや、鶴橋の「よあけ」など築地周辺の飲食店が束になってもかなわない。
 同じ都内でも学生街であるお茶の水に暮らしていると、食い物があまりに高額であるので驚愕すること屡々である。
 現在では、いちばん過酷な労働者である、しかも自由になる時間のほとんどない仲卸の店員にとって、もっとも遠い「めし屋」が築地場内食堂群となっている。

 さて築地で働く人にとって、もっとも素早くうまいものが食えるところはどこか? というと『中栄』とか『吉野家』なんじゃないだろうか?
 あえて一店舗に絞り込むと『吉野家』に違いない。
 どこにでもあるチェーン店、どこで食べても「あの味」でしょ?
 こう思うのも致し方ないのだけど、ボクが食べる限り、築地場内の『吉野家』、牛丼の味は他店舗と違うように思える。
 気のせいだろう? とは思うけど、食べるたびに、その安さ、早さ、店員の接客のよさ、に感激する。

 さて、『吉野家』をよく利用していたのは、かなり昔のことになる。
 週に2回、3回と立ち寄ったことも珍しくない。
 一度だけ、疲れて座席にどしんと座った途端「つゆだく、みそ汁ですか」と言われたことがある。
 この店の店員さんの記憶力のよいこと。
 さて、かなり通っていても、店員さんたちの使う「つゆだく」なんてことを訳知り顔に使う気になれない。
 なんだか気恥ずかしい。
 これは『豊ちゃん』でも『中栄』でも同じだ。
 ボクはいつでも「牛丼並つゆたっぷり、みそ汁」。

 さて、かれこれ10年以上吉野家に入っていない。
 久しぶりで食べる牛丼は、やはり築地に限るな、と思う。
 よそで食べるよりも明らかにうまい。
 
吉野家
http://www.yoshinoya.com/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
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