島根県浜田市にある浜田漁港は国内でも有数の水揚げ港である。
巻き網、底曳網、一本釣り、磯漁、刺し網など様々な漁があるし、その漁は西日本でも屈指のものだろう。
そんなに大きな港なら、さぞやうまい飯屋があるのではないか? きっと誰もが思うに違いない。
ところが残念ながら、「市場でごはん」という楽しみはたった一軒『MESAMASHI』だけしか望めない。
JFしまね浜田支所前に、早朝にトラックが到着する。
これが『MESAMASHI』の正体だ。
なかから年齢不詳のお姉さんが出てきて、トラック後部の扉をばたりばたりと開ける。
小さなテーブルやバケツなどを出した途端に、仲買さんやJFの職員さんがわっせわっせと駆けつけるのだ。
なぜ駆けつけなければならないか? はトラックの前を見るとすぐにわかる。
手前の机の上におでん、そしてトラックの手前側にお握りいろいろ、奥のトラックの荷台にあたる部分が厨房になっている。
問題はこの手前にあるお握りとおでんだろう。
早くしないと好みのおでんダネ、おにぎりがなくなってしまうのだ。
さて中にいるのは、きりりとしたお姉さんであって、こっちが慌ただしく注文したりすると、「待ってくださいな」なんてピシャリとくる。
この言い方がなんともほどよく、また有無を言わさぬものであるのがいい。
さて、ほとんどの常連さんは、まずはうどんかそば、そしてお握り1個か2個。
もの足りない若い衆はこれにおでんを2、3個といったところだ。
ラーメン、チャンポンもあるが、いちばんの売れ筋はうどんに思える。
慌ただしい市場での飯だから、うどんのなかにいきなりおにぎりを放り込み、そのまま麺と崩れたおにぎりをズルサラズルサラとかきこむのが浜田流。
もしくはうどん、そばをとり、出来るまで、おでんを皿に入れる。
つゆを少し入れて、そこにおにぎりを放り込んで食べている人も多し。
どうやら浜田人は汁っぽいのが好きらしい。
『MESAMASHI』の品書きのなかでボクが一押しなのが肉うどん450円だ。
過去にラーメンを食べているが、もう10歳若ければ好きだろうな、という味であった。
今回はなに食べようか?
ちなみに浜田でそばを食べる気になれない。
ボクは関ヶ原を超えると、うどんしか食べないことにしている。
ましてや食堂の麺類となると、西日本でそばはいやだな。
でも品書きの下段にあるチャンポン650円(実は700円)が目をとらえて離さないのだ。
これは11月に北九州に行ったため。
九州では本来ラーメンではなくチャンポンの大陸(世界的には島だけど)なのだと確信した。
じゃあ山陰はどうなのだろう、チャンポンの大陸の九州からそんなに遠くはないのだ。
それでむらむらと「チャンポンください」。
脇で体重が100キロオーバーになってしまっているヤマトシジミさんまで「私も」なのだ。
出来上がるまでにおでんの牛すじ、ごぼう天におにぎりひとつ。
おにぎりはおでんの汁に少しだけ浸している。
この浜田流おでんおにぎり融合的食べ方がいい。
だいたい『MESAMASHI』のおでんがうまいし、当然ながら汁だってうまい。
そのおでん汁を毛細管現象によって適度に吸い取ったおにぎりが、不思議なんだけど魅力的な味になっている。
やっとチャンポンがやってきた。
これは確かにチャンポンなのだけど、スープに豚骨の臭いがある。
チャンポンの概念からは遠く、むしろタンメンに近いといったもの。
勢いよく食べ終わったものの、ボクとしては『MESAMASHI』ではうどんに決めた方が最良の選択のようだ。
さて、早朝から市場歩きして、これでも腹に隙間がある。
おでんの鍋の蓋を開けて、厚揚げと卵を追加して、やっと人心地ついたのであった。
腹の虫がをなだめて、いざ浜田魚商売マーケットでうまい魚でも買おうではないか!
2009年2月11日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
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