築地通いも長いが、バブル崩壊後くらいからだろうか、増えているものに海鮮丼というのがある。門跡通りなどに並んでいる看板を見ていると、ほとんどが冷凍物を解凍したもの。これは日本全国の共通事項。海鮮丼ほどいかがわしいものはないなんて思っている。
それが、福井県中央卸売市場関連棟『海鮮処 群青』にもあった。市場の方がすすめるくらいだから、けっしていかがわしいものではないと思うが、やはり海鮮丼は恐い。黒板には「本日のお刺身4種と、マグロ、ウニ、イクラ」とある。マグロ、ウニ、イクラは陸送もの、もしくは冷凍ものだろうが、地魚4種は魅力的だ。
お願いして出てきた海鮮丼(1300円)が華美でないのに一安心。ここにカナダのスポットエビなんかが入っていたら、たまらない。海鮮丼は素朴、飾り気がなくていいのだ、と思う。
まずはご飯を掘り出して食べてみる。あれあれ、なんと白飯である。生ものを白飯と合わせるのは非常に難しい。魚が新しいので大丈夫だろう、とは思うものの、「白飯かー」と箸が伸びない。これを見ていた市場の方が、皿にしょうゆを満たしてくれた。このしょうゆをなめて白飯であることに大いに納得する。
このしょうゆが福井県の海辺の町で作られている甘口なのだ。兵庫県家島の「富士大」など海辺の町で好まれているしょうゆは甘口が多い。この甘口のしょうゆが海鮮丼に合うのである。
マイカ(ケンサキイカ)、スズキ、サワラ、ハマチがシコシコして実に新鮮、実にうまい。これを甘いしょうゆが白飯になじませて一体感を感じる。
みそ汁には魚のあらが入ってうま味たっぷり。小鉢ものも丁寧に作られている。紅白なますを、「長寿なます」というらしいが、これも口直しにいい。
さて、『群青』での食事はまだまだ続くのだが、本日はここまでにて。
福井市中央卸売市場