築地で大食いすることを「つきじろうする」と書くようになって久しい。
今回は案内も、つきじろうさんなので「tukijirou tukijirou」と新種登録したいような築地飯だ。
さて話は3月21日にさかのぼる。
島根一の大食いをほこるヤマトシジミさんが上京してきたので、一緒に「つきじろうする」べく、つきじろうさん本人の案内で『天房』に入る。
当然、『天房』全品書きを踏破した、つきじろうさんおすすめに従い、シバエビと穴子の天丼(1200円)にした。
シバエビの天ぷらは我が家の定番料理のひとつだ。
へたなブラックタイガーよりも、段違いにうまい。
「では、私はマグロ定食(1000円)にします」
このあたりが、つきじろうさんの曲を好む性だろうが、「素人は天ぷら屋で天ぷらものを、私玄人はこれなのよ」といった具合かもしれない?
なんだかイヤな予感がする。
で、大丈夫かと思った天丼にまずは感激。
見事と言うしかない。
丼汁のかけ具合、当たり前だけど、天ぷらの美しさ。
外見上は素晴らしいとしかいいようがない。
そして、そして「私食べてもうまいのよ」なんて天丼が誘いをかけてくる。
やっぱり味も猛烈いい(そう言えば“猛烈”という言葉が好きなのは現40代以上なんだな。理由は教えてあげないけど)。
なによりシバエビのさくっと揚がって、香ばしく、しかもエビの風味の高いこと。
シバエビだって、マアナゴだって、「うますぎてうますぎて困る」。
これをこれから「UUK」と書きたいほどに感激する。
『天房』の天ぷらは「UUK」だ!
ただ待て暫し。
なぜ、こんなに天ぷらがうまいのに、つきじろうさんはマグロなのか?
これには深いワケがあるに違いない。
そしてマグロ定食が来て、やっぱりこっちも「UUK」に違いないと確信の確信をする。
ここで、つきじろうさんの策略にはまってしまったことに気がついた。
つきじろうさんが考える『天房』のベストはマグロ定食に別注文の天ぷら数種を合わせる、複雑で深謀遠慮な組み合わせではないか?
ようするに「初っぱなからベストを望むのはダメなのよ」と目が語っている。
つきじろうさんにとって『天房』のマグロ定食など空腹時に木村屋のあんぱんを食ったほどにも感じないだろう。
当然、つきじろうさんは、平凡な大食いである我々を見捨てて、『ふぢの』で味噌ラーメンとシュウマイ(木村屋のあんぱん二個目)かなんか食べる。
途中センリ軒のコーヒーでも挟んで、またきっと『天房』にもどり、こんどは天ぷらお好み、ご飯、みそ汁(木村屋のあんぱん三個目)を食べる。
ボクはこれを「つきじろうのブーメラン食い」と呼びたい。
そしてたぶん当日のつきじろうさんの朝ご飯は100パーセントこの筋で間違いないはずだ。
だれも信じないだろうけど、ボクの推理力は金田一耕助以上だからね。
このとき、今度築地に来たら、絶対に「マグロ定食に別注文の天ぷら数種を合わせ」を食ってやるとかたく誓ったのだ。
春は築地で朝ごはん
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
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