築地場内には仕事で、また魚を買いに月になんども行く。八王子の自宅から向かうので着くのは7時前後。場内の仲買の品物が揃うのもこの時間なので便利と言えば便利である。
通路が狭くて、膨大な仲卸を見て歩くのはとても大変である。「えいや!」と、仲卸棟に飛び込む前に来るのが場内の『センリ軒』である。
ここでジャムトーストにコーヒー、プリンとコーヒー、カツサンドにハムきゅうサンドとか、スープとかお願いして空きっ腹をなだめる。低血糖で仲卸棟に入るのは危険である。
細長い店には裏表どちらからでも入れるが、私好みは「裏側から」。すぐのカウンターにとりついてため息をひとつふたつ。笑顔が優しいマスターが右手にお兄ちゃんが左にいて、いつもお兄ちゃんが皿を拭いている。ときどき聞こえてくるスプーンのカランカランという音がいい。
とりあえずはコーヒーをお願いして、プリンだけにするかどうかを決める。
コーヒーを飲んでいるとお茶が出てくるのがまたうれしいー! 古びた給湯器や角砂糖の赤い箱、ステンレスのクリーム入れが、おだやかな照明が、ぼくの心を温めてくれる気がする。
蛇足だが、元気なときに頼むのがカツサンドなのだけど、1人前だとなぜかしらもの足りない。まあそれほど味がいいということだろう。