築地場内で昔ながらの商売を、基本的なあり方をもっとも忠実に、ガンコに続けている店が年々減少しているように思う。
なにしろ築地場内では定食で1000円前後もする。
そこに奴でもつけると1500円なんてことになりかねない。
いい魚を使っているとか、場内の管理費がかかるからとか、いろいろ理由はあるだろうけど、最近廉価となってきた“銀座でご飯”となんら変わらない。
しかも、出てくるものがたっぷりして充実したものなのか? 上等か? というと、まったくその逆だ。
しかも、しかもかなりまずい店が多々ある。
この築地周辺の飯のまずさを、より強く感じたのは大阪の市場に行くことが多くなってからだ。
木津のうどんや、鶴橋の「よあけ」など築地周辺の飲食店が束になってもかなわない。
同じ都内でも学生街であるお茶の水に暮らしていると、食い物があまりに高額であるので驚愕すること屡々である。
現在では、いちばん過酷な労働者である、しかも自由になる時間のほとんどない仲卸の店員にとって、もっとも遠い「めし屋」が築地場内食堂群となっている。
さて築地で働く人にとって、もっとも素早くうまいものが食えるところはどこか? というと『中栄』とか『吉野家』なんじゃないだろうか?
あえて一店舗に絞り込むと『吉野家』に違いない。
どこにでもあるチェーン店、どこで食べても「あの味」でしょ?
こう思うのも致し方ないのだけど、ボクが食べる限り、築地場内の『吉野家』、牛丼の味は他店舗と違うように思える。
気のせいだろう? とは思うけど、食べるたびに、その安さ、早さ、店員の接客のよさ、に感激する。
さて、『吉野家』をよく利用していたのは、かなり昔のことになる。
週に2回、3回と立ち寄ったことも珍しくない。
一度だけ、疲れて座席にどしんと座った途端「つゆだく、みそ汁ですか」と言われたことがある。
この店の店員さんの記憶力のよいこと。
さて、かなり通っていても、店員さんたちの使う「つゆだく」なんてことを訳知り顔に使う気になれない。
なんだか気恥ずかしい。
これは『豊ちゃん』でも『中栄』でも同じだ。
ボクはいつでも「牛丼並つゆたっぷり、みそ汁」。
さて、かれこれ10年以上吉野家に入っていない。
久しぶりで食べる牛丼は、やはり築地に限るな、と思う。
よそで食べるよりも明らかにうまい。
吉野家
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