管理人: 2009年8月アーカイブ

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夏休みだ。
午前8時前、築地市場駅からえんえん続く人並みに、ここはやはり東京随一の観光地であるのだな、と思い知る。
外国の方、明らかに地方から上京してきた方々が市場内を右往左往している。
空は厚い雲に覆われているのに、うっすらとした日差しが落ちてきて、体感温度は軽く35度を超えている。
地上に出たとたん汗が吹き出してくる。
本当に腹の辺りから、汗が「ズビズバー」とポロシャツに黒い地図ができる。
うだるような暑さなのに、観光ガイドにのっているような店の前には行列行列。
そんなごった返す場内で、ボクは常日頃と変わらない店を探す。

さて、店に入る前に、ここで築地に来る人に忠告。
「海鮮丼」というやつ、せっかく築地まできたんだったら、食べることはないんじゃないのかな。
生だったり、天然物だったりすると、丼の上をちょっと賑やかにするだけで、軽く3千円以上にはなる。
3千円以上でもそんなに儲けがない。
「海鮮丼千五百円やすーい」
こんなバカなことで感心して行列に並ぶ人よ、それは築地じゃなければ、もっと安く食べられる代物なのだよ。
築地に来たら海鮮丼だけはやめたほうがいいよ!

目差すのは「やじ満」。
ここで冷やし中華にするのだ、と門前仲町で乗り換えるときから決めていたのだ。
裏側から、ボクの体形をしてやっとすり抜けたら、そこは六割方しか席がうまっていない。
しかも総て常連さんらしき、だ。

「冷やし中華」
「はい、冷やし中華、これで計3つだよ」
席に座ると、冷たーい水がすっと出てくる。
ここ「やじ満」の冷やし中華は、甘酸っぱいたれのかかった昔ながらのものだ。
卵焼き、焼豚、キュウリ、紅ショウガという"お決まりの具"がこれまたよろしおますな。
このところ、よくよく思うのだけれど、食べ物に創意工夫はいらない。
普通がいちばん。
だいたい普通に冷やし中華を作るのがいちばん難しい。
「やじ満」はそれをやっているのだ。

さて、この店に来たらジャンボ焼売たべなきゃ、ならない。
昔はそう思ったものだが、最近は隠忍自重。
堪え難きを耐え、忍び難きを忍んで我慢している。

お隣では熱々大盛りのマーボラーメンと格闘中の、明らかにボクより年上の市場人がいる。
その勇気に拍手喝采。
しかしその吹き出す汗が飛び散る飛び散る。
また、今回初めて「ホワイトラーメン」という言葉を聞いた。
この店に初めて入って以来四半世紀になる。
だいたい数ヶ月に一度しかこないのだから、ときどきこんな発見がある。
「ホワイトラーメン」というのは鶏ガラ塩味スープのラーメンのことらしい。

さて甘酸っぱい、冷やし中華に、大量にからしを溶き込み。
コホンコホンとむせながら、ほんの5分ほどで平らげる。
今日の場内、どんなもんがあるんだろう。

築地めしに関しての懇切な案内は、つきじろうさんの「春は築地で朝ごはん」へ
http://tsukijigo.cocolog-nifty.com/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/index.html

2009年2月、広島駅前に荒神市場を探す。
広島に行ったら荒神市場という情緒ゆたかな市場があって、旨い魚がいっぱい並んでいると書籍で知り、また知人からもかねがね聞かされていたのだ。
1945年原爆が落されて、甚大な被害を被った広島で、駅前に闇市ができ、これが市場となったもの。

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決して期待してきた訳ではない。
そういえば市場案内の書籍は非常に低級だし、例えば旅行関係ライターの食に関しての質の低さ、無知にはビックリすることが多い(本当のことが書けないせいでもあるだろうけど)。
加えるに荒神市場を名前だけ知ってからの年月が問題だった。
だから広島駅周辺にまだ市場が存在するのか? これ自体が疑わしい。

広島駅を出る。
市電の乗り場が目の前にあって、左手に『愛友市場』の看板があった。
遠目に見ても、ごちゃごちゃした、まさに昭和を感じずにはいられない光景。
これは間違いなく闇市起源の市場だろう。
これが昔の荒神市場だった。
1988年に改名して現在では『愛友市場』となっている。
駅前からゆっくり歩いても3分ほど。

いきなり入り口にサウナ風呂の文字がある。
照明器具(イルミネーション)の看板が、古く茶褐色に錆び付いてしまっていて迫力がある。
早足で市場に向かうと、右手に品揃えのいい八百屋があって、通りからうまそうな香りが漂ってくる。
いかにも市場の入り口らしくていい感じだ。

市場の看板のある三角形をした建物から、まっすぐにやや大きめの通路がある。
この通り沿いの鮮魚店に、まずはがっかりする。
広島らしさがない。

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むしろ総菜屋さん、肉屋、乾物屋などが安くて、うまそう。
一軒、見事な牛肉を売っている店があって、まずは冷蔵ケースの肉に目が張り付いたものの、もっと気になるものがあって、それが通路の壁に張られたポスターだった。
「探偵社」のポスターになぜか前田吟、ポスター脇に本棚があるもの不思議だ。

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通路は四方に続いているがシャッターを締めてしまった店舗が目立つ。
これは午後3時を回っているためらしい。

通路をずんと通り抜けると、大きな通りに出てしまい、真正面に見えるのが駅前にあるもうひとつの市場である『猿猴橋市場』だ。

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横断歩道を渡って市場をのぞくが中は真っ暗。
現在でも営業しているものなのか、まったくわからない。

やや広い通りを突き切ってがっかりした。
引き返して、今度は細い通路に分け入ってみる。
これが大正解だった。

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裸電球に照らされて古めかしい小さな鮮魚店が続く。
どの店にも新鮮な魚貝類が並んでいる。
瀬戸内海産であろう、小イワシ(カタクチイワシ)、オコゼ(オニオコゼ)、マダイにマコガレイ。
広島市民が熱狂する夜泣き貝もちゃんとある。
でもこれは島根県でとれたコナガニシだ。
瀬戸内海のナガニシ(本来の夜泣き貝)は激減しているという。

ナマコからこのわたを出している。
その前にお客らしい女性がいて、本体は本体で切り、このわたは別の袋に入れている。

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「ナマコ、ボクにもいただけますか?」
「もーない、こんな時間に来てもほとんど魚もないじゃろ」
「そうですか、何時くらいにきたらいいんですか?」
「午前中とはいわんけど、もっと早うこんといかん。皆店じまい始めとる」

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それでも、店頭をのぞいて歩くと天ぷらや刺身、焼き魚などが売られていて、どれもうまそうだ。
目移りして仕方がない。

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後は新幹線に乗り込むだけなので、タチウオとカレイ(マコガレイ)の刺身、天ぷらと、いろいろ買い込む。
手持ちのクーラーバッグがいっぱいになって困っていたら、魚屋のオバチャンが簡易なクーラーバッグをくれた。

「お兄さん(ボクはそんなに若くない)よかったな」
近所のご夫人が笑っている。
「ここで買い物をいつもしてるんですか?」
「そうじゃ、食べ物はここ買いますね」
「長いんですか」
「もうかれこれ50年くらいじゃね」

この市場、庶民的で親切きわまりない。
広島のお土産は駅前市場で買うに限る、なんて思う。

乾物、成果、食肉など、この市場は見所満載だった。
『愛友市場』にある飲食店も外から見るだけだったが、魅力を感じた。
次回は市場飯も楽しみたいものだ。

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広島市はたくさんの川が瀬戸内海に流れ込む地なのだ。
短い滞在時間だったが、それでも川と橋の町だなと思う。
前海は淡水、汽水域、海水の総てが微妙に織りなす広島湾、ここに豊かな海の幸があって、それがそのままこの大都市に揚がる。
その本来の面影が駅前市場には今でも見られる。

●本ページは改訂をしていく

食の満足度 ★★★★ 広島らしい食材がいっぱいで楽しい
●食の満足度は、食に関する発見、うまい食材が手に入る度合い。満足度が高いほど★が増える。満点は5つ★
市場飯 まだ食べていない。期待できそう
●うまい飯が食えるかどうか? 満点は5つ★
気軽さ ★★★★ みんな親切です
●気軽さは、一般人が入って買い物が出来るかできないか。買い物がしやすいほど★が増える。満点は5つ★

広島駅前市場探検隊を参考にしました
http://www.city.hiroshima.jp/kikaku/kikaku/vi/ekimae/top.htm
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

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