管理人: 2009年1月アーカイブ

KOYAMA0901011.jpg
●クリックすると拡大

 鳥取市の西にある広大な湖山池は不思議な景観をしている。
 池の周りを走っていると、まるで深い湾を見ているよう。
 それもそのはずで、その昔、この辺りは砂地に島が点在する海辺だったのだ。

 さて今回湖山池を案内して頂いたのは鳥取市議会議員の児山良さんと、岩美町浜勝商店の十九百(つづお)さん。
 ボクが湖山池を知るきっかけとなったのが、江戸時代から続く、この地独特の石がま(いじがま)漁である。
 湖の一角に石積みを作る。
 これが冬季になると魚などの潜む場所となるのだ。
 寒くなって石積みに集まってきた魚(コイ、フナなど)を、一角に設けた空間(胴函)」に竹筒などで追い込みとらえるもの。
 ようするに石造りの定置網のようなものともいえそうだ。

ISIGAMA090101.jpg
●クリックすると拡大
今でも使われている石がま。石の間に竹などを差し込み、中央手前の胴函に追い込む

 この漁のことは知っていたものの、鳥取県のどこで行われていたのか、よくわかっていなかった。
 鳥取県の日本海側には東郷湖という湖があって、明らかにボクは間違えて覚えていた。
 その間違いを指摘するとともに、湖山池に案内してくれ、児島さんに紹介してくれたのが十九百さんなのだ。
 考えてみると十九百さんという人、会えば会うほど、ボクにたくさんにことを教えてくれる。
 このような点からも、深く深く感謝したい。

 湖山池は貴重な伝統漁法が残るだけでなく、ヤマトシジミ、シラウオなどの漁場でもある。
 もちろん冬季のコイやフナなども鳥取市になくてはならない味覚なのだろう。
 ボクはこのように生活に密着した水域というのに非常に惹かれる。
 自然保護などというとき、この生活感がまったく感じられないことがある。
 例えば世界に名を馳せるグリーンピースとか、三番瀬周辺の団体とか。
 この方達はまるで霞を食べているかのごとき、発言をする。
 発言に生活者としての観念が欠如している。
 今、もっとも脅威にさらされているのが、もともと生活に密着していた水域であるのに、そこで暮らす人のことを全然省みないのは多いにおかしいのだ。

 さて、話を湖山池にもどさないといけない。
 湖山池の東方を流れているのが山陰の大河ともいえそうな千代川(せんだいがわ)である。
 この河口にあるのが賀露漁港(鳥取港)。
 港の改修が行われるとともに、もともと河口と繋がっていた水路を、千代川の上流につけ替えてしまったのだ。
 実をいうとシラウオもヤマトシジミも汽水域に生息するもの。
 当然、塩分濃度の変化で多大な被害を被っている。
 その上、湖山池の水質まで悪化してしまっていて、今水面に繁殖増大しているのがヒシ(菱)なのだ。
 シラウオもヤマトシジミも激減して、湖山池漁業協同組合の漁業者のみなさんも疲弊している。

「増えているのはヒシだけなんです。ヒシって知ってますか? この辺じゃよく食べるんですけど、おいしいんです」

HISI0901011.jpg
●クリックすると拡大
湖山池産のヒシの実

HISI090101222.jpg
●クリックすると拡大
ヒシの実の食べ方を児島さんに教えてもらっているところ。手前が児島さん、右側が十九百さん

 この湖山池産のヒシの実は忍者が使う撒きビシのような形だ。
 それもそのはずでその昔、忍者などはヒシの実を使って追っ手の来るのをまいたのだ(?)。
 ここで注釈がいるのだけど、その昔『隠密剣士』なんて番組があって霧の遁兵衛などから懐から鉄製の「撒きビシ」を投げるのだけど、その原型が植物のヒシということだ。
 ヒシの実は栗のようにほっこりしていてうまい。
 うまいけど湖山池の漁師さん達の暮らしの支えとはならないのだ。

 湖山池をぐるっとまわって、石がま(いじがま)のある場所に歩いていく。
 山際に民家、道を隔てて田んぼがあって、池に面している。
 池面は静かで波もなく、微かに鳥の声がするだけだ。
 やがて見えてきたのが植物の生い茂った島ともいえるもので、これが今は使われなくなった「石がま」である。

KOYAMAFURUI090101.jpg
●クリックすると拡大
今では使われなくなった「石がま」

KOYAMAISIGAMA090101.jpg
●クリックすると拡大
人と比べると大きさがわかるはず

「石がまの手入れは大変なんです。ちょっと放っておくと草だらけになってしまいます」
 池にそって歩いていると、護岸から2メートルほど離れて石組みの島がある。
「去年の暮れに漁をやったらいっぱいコイやフナが入ったんです」
 児島さんの説明では、「石がま漁にはたくさん人手と、維持するのにまた多大な人力を必要とする」のだという。

 我がサイトでもなんとかして湖山池の漁業者のかたの支援をしたい。
 またこの「石がま」の維持に協力したいと思う。
 今期のヤマトシジミ、シラウオ漁はいかがなものだろう。
 また湖山池のヒシの実を食べてみたい、扱ってみたいと思う業者の方の支援も請う。
 
児島良
http://www.kojimaryo.com/cgi-bin/index.cgi?contents=profile
湖山池研究所(ここに漁業者の情報がない。不思議だ)
http://www.city.tottori.lg.jp/koyamaike/index.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

koganemono.jpg
●クリックすると拡大

 胆過市場の裏手にでると、そこが都市モノレール小倉線旦過駅である。
 時刻は11時半を回っている。
 ここから一駅乗ると香春口三萩野(かわらぐちみはぎの)という駅で、ここに黄金市場がある。

 駅から続く横断歩道を南下するとすぐ、大きな道路沿いに「黄金市場」の看板。

kogane.jpg
●クリックすると拡大

 表から市場内を覗くと、意外に明るい通路が奥に続いているものの、両側はシャッターが目立つ。
 通路沿いに注連縄、御幣が下がっていて、これはいったいなんの意味合いだろうと不思議に思う。

koganenerimono.jpg
●クリックすると拡大

 通路にいるのはボク一人だ。
 奥に向かって所在なく歩く。
 練り物、揚げ物を売る店、総菜店、そして餅屋さんがあって、なかなか風情がある。
 シャッターが目立つのは本日が水曜日であるためかと改めて思う。
 この練り物屋さんにパン巻きという不思議なものを発見して、一個だけ買って食べてみる。

koganesouzai.jpg
●クリックすると拡大

 なんと表は食パン、中身は魚のすり身というもので、一様九州では「天ぷら」の一種となるのだろう。
注/西日本では天ぷら、関東では薩摩揚げとなる。
 餅屋のそばの八百屋さん、店頭の野菜の安さに驚く。

 魚屋さんにトラフグの刺身があるのも九州ならではだろう。
 その刺身のうまそうなこと。
 面白いものでは「魚の皮」、「タイラギの小さい方の貝柱、ヒモ」、「えそのすり身」がある。

koganefuguchan.jpg
●クリックすると拡大
「魚の皮」、「タイラギの貝柱以外」、「ふぐのチャンポン」。フグのチャンポンとは皮と身の湯がいたものであるようだ。

 残念ながら、水曜日のために魚の種類は非常に少ない。
 カワハギ、サワラ、マサバ、カサゴ、ブリ幼魚など。

koganeshoutengai.jpg
●クリックすると拡大

 この通路を抜けるとアーケード街に出る。
 ここ市場と商店街が一体となっているのだ。
 商店街にも魚屋を2軒みつける。
 ともに水曜日であるために寂しいものなのだけど、片方「豊前海から直送」と書かれている店でビックリするものを発見。
 この話はまた後日書くけれど、一瞬我が目を疑うほどに驚く。
 この店にはサルエビ、ヨシエビ、アカエビ、ガザミ、タイワンガザミ、コイチ、クロホシイシモチ、キチヌ、クロダイ、マガキ、サルボウ、アサリ、コウイカ、マダコ、ヒイラギ、カツオ、イトヨリ、メバル、カサゴ、キダイ、マトウダイ、マコガレイ。

koganesakana09.jpg
●クリックすると拡大

 これが水曜日でなければもっともっと凄いんだろうな。
 大発見に喜びを感じるとともに、改めて次回を期す。

 うまそうな豆腐屋がある。
 食堂に、味噌屋、海苔乾物、洋品店、花屋。
 真っ赤な暖簾の下がったラーメン・チャンポンの店で、市場飯。

 北九州の市場をできるだけたくさん見たいわけで、時間がないのが残念だ。
 慌ただしく歩きながら、野菜、惣菜、水産物の値段を見るに、やはり関東などと比べると驚くほど安い。
 とくに総菜類は種類も多く、豆類が多いのも特徴かも。

 都市の中心部にありながら規模も大きく、食材も豊富で、しかも値段が安い。
 黄金市場はまことに魅力溢れる市場である。

2008年12月11日
北九州市にぎわいづくり懇話会
http://lets-city.jp/konwakai/index.html
黄金市場 北九州市小倉区黄金1
http://www.koganeichiba.com/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

 久しぶりの沼津行、わくわくするかというと、全然しない。
 何しろ今回の目的は「仕事」であって、オマケに底引きが休漁とわかっているのだから。
 それよりも久しぶりの深夜特急(深夜にクルマを走らせる)方がどきどきする。
 ボクは基本的にクルマも、クルマを運転することも大嫌いなのである。
「クルマなんかない方がいい」

 朝3時前、国道16号を南下する。
 NHKラジオ深夜便から森進一の歌声が聞こえてくる。
 思わず消そうかと思ったが、ほかに聞くアテもなく、そのまま聞き流す。
 ところが思ったよりもいいのである。
 歌に引かれると言うよりも1970年から1980年に、ボクがその時代まったく聞かなかった音楽に懐かしさを覚える。
 例えば万博であったり、紅白の主要なものが演歌であったり。
 深夜の国道にくぐもったような森進一の声が、過去を思い出させてくれる。
 暖房利きすぎの車内で、うすらぼんやり国道を南下していたら橋本で129号線に入りそこなう。
 気がついたら町田も相模大野も通り過ぎてしまっている。
 悔しい思いをしながらもどり厚木から東名にのる。
 午前4時55分にインターを出たら、沼津インター付近がすっかり変貌している。
 いったいこのあたりはどのようになるのか、想像が出来ない。
 途中駅前に右折、沼津港にまっすぐ進む。
 午前5時を回っている。
 市場はすっかり活気づいていて、人の波をよけながらクルマを止める。
 さてほとんど1年振りの沼津ではないだろうか?

 慌ただしく「イーノ」(沼津魚市場新場)を目差すとき、帽子を忘れていることに気づく。
 本当に今年はやることなすこと、こんなことだらけだ。

ino090101.jpg
●クリックすると拡大

 「イーノ」の広い空間に人はまばら、それ以上に魚がない。
 荒天続きで地物が少なく、陸送物が目立つ。
 原釜(福島県相馬市)あたりからメスガニ(ズワイガニ)、ネジボラ。

iruka090101.jpg
●クリックすると拡大
伊豆はその昔、イルカ漁が盛んだった。その名残で未だにイルカを食べる習慣が残る。このような食文化も絶やしたくないものだ

 岩手県からはリクゼンイルカ(イシイルカ?)。
 ブリも小ムツもよそからきたものばかり。
 そこにキンメダイの紅があってほっとする。
 ヤリイカの雄が並び、釣りもののタチウオ、のどくろ(ユメカサゴ)。
 アカムツ、アマダイ(アカアマダイ)がまとまっていある。

amadai090101.jpg
●クリックすると拡大

nodokuro090102012.jpg
●クリックすると拡大

 ただ、この水揚げの少ない時期に、高騰するのが目に見えているわけで、競り人も回りを何気なく周回しているのみ。
 ミズイカ(アオリイカ)、ジンドウイカがあってコウイカ類がないのが不思議だ。
 結局コウイカは3ばい、しかも最後に戸田からのものがきたのだけどウスベニコウイカだろう。
 マナマコも活けでたっぷりきていて、「ナマコをみると冬なんだな」と改めて思うのだ。

tati0901012.jpg
●クリックすると拡大

 沼津のもうひとつのノドクロ(チゴダラ)があって、ギスがあり、マトウダイ、アラ、スズキ、ヒラスズキ、ブダイ、アカラサ(ヒメコダイ)、フサカサゴ、オニカサゴ(イズカサゴ)、カサゴ(ウッカリカサゴ)、カサゴ、エビスダイがある。
 オオメハタがまとまってあるが、ナガオオメ、ワキヤハタは混ざっていない。

yari090101.jpg
●クリックすると拡大

 水槽には大量の活けのヤリイカ、カサゴ類、ヒラメ、カワハギ。
 担当の山田さんと立ち話。
「やっぱりカワハギがいちまんうまそうだな」
 少し離れて養殖もののクエ。

aoki090101.jpg
●クリックすると拡大

 やがて佐政水産の青木修一さんがやって来た。
「これじゃ仕方ありませんね。揃える(注文に応じる)のが大変です」

 狩野川の川ガニ(モクズガニ)があって大型のウナギがきている。
 丸々太った天然もので脂がのっていそうだ。

unagi0901012.jpg
●クリックすると拡大

mekajiki0812121.jpg
●クリックすると拡大

 ひととおり見て、キンメダイの場所にもどると大きなメカジキがおかれていた。
「なぜ、ここにあるの」
 担当者に聞くと、
「キンメ釣っててかかったんだって、二人乗っていたからなんとか上がったっていってたな」
 ワタをだし、ツノを切り落として121キロとはでかい。
「これならたいした儲けになっただろうな」
「違うらしいよ。キンメを釣り続けた方がよかったんじゃない」

 荷さばき場を除くと菊地利雄さんが忙しそうに段ボールを運んでいる。
 沼津の魚の魅力が徐々に知れ渡っていて、青木修一さん(佐政水産)や菊地利雄さん(菊貞・山丁)さんは大忙し。
 ボクの個人的意見ではあるが、日本広し、漁港は数あれど、沼津ほど多彩で、珍しい魚貝類の上がるところはまずないだろう。
 沼津の魚貝類がもっともっと値上がりしそうで怖くなる。

 さて7時半まで密かに島根県水産アドバイザーーとしての仕事をこなす。
 そして8時近くになって、地元の甲殻類学者飯塚栄一さんがやってくる。
 これまたいつもの「たか嶋」で、いつもの朝ずしを食べながら、甲殻類の話で盛り上がる。

 9時過ぎに青木修一さんにお願いしていた魚を受け取り、志下で日本酒を買い込んでから沼津を後にする。
 上り東名高速にクルマは少なく、「やはり不況なのかな」なんて思っていたら、クルマのメーターにエンプティマークが点灯している。
 いつから点っていたものか、不安をつのらせながら、危機一髪で厚木を出る。

●沼津の魚貝類に商業的に興味のある方はご連絡下さい。
我がサイトにメールアドレスがあります。
基本的に商用もしくは事務的なもの以外のメールは受け付けていません。
魚貝類に感心のあるかたなどは掲示板へ
http://csi.or.tv/tsukiji/kb/rb.cgi 
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

karoiti081212.jpg
●クリックすると拡大

 2002年に鮮魚、加工塩干、飲食店などの共同店舗としてできる。
 立地的に観光的な要素が多々ある。
 年間入場者数70万5000人。
 周辺にも観光市場が並び、カニの季節(冬)には観光客がたくさんおとずれる。
 店舗数の減少など、紆余曲折があった模様だが、観光市場としては成功している。

 『かろいち』の外観はいたって素朴で、無駄な装飾がなく、薄汚れた感じがしない。
 薄汚れた外観というのは無駄な装飾や、周辺に配慮しない突出した色合いの建物に現れる。
 『かろいち』は外観の点からして好感が持てる。

tuuro081212.jpg
●クリックすると拡大

 中に入るとややがらんとして寂しい。
 鮮魚店4、とうふちくわの店1、JA農産物を売る店1、飲食店4。
 店舗数が少ないのが難点だともいえそうだ。

 鮮魚店は非常に優秀である。
 持ち帰りなどにも配慮がなされている。
 これなら真の魚好きにも愛されるはず。
 近くにある賀露漁港水揚げのものが、すぐここで手にはいるというのはまことに素晴らしい。

sakana081212.jpg
●クリックすると拡大

sakana08121314.jpg
●クリックすると拡大

 魚屋の店頭を見ていく限り、8割方地物(境港のものも含む)、あとの2割が陸送もの。
 この数字は観光的な市場としては見事だろう。
 出来る限り地物を売る市場であり続けて欲しい。

sakana08121444.jpg
●クリックすると拡大

 鳥取と言えばソデイカ、白はた(ハタハタ)、サワラ、ブリ、アカガレイに、れんこ(キダイ)。
 沖きす(ニギス)、もさえび(クロザコエビ)、赤えび(ホッコクアカエビ)、赤ばい(エゾボラモドキ)、白ばい(エッチュウバイ)、テナガダコ。
 冬季には名物松葉がに(ズワイガニ)もでてくるだろう。

 飲食店が4。
 市場料理を掲げる店、カニの専門店もある。
 すし屋があるのも魅力的だ。

inaba081212.jpg
●クリックすると拡大

 最後に出色なのが農産物のあることだ。
 『JAいなば』の店頭には地物野菜が溢れている。
 卵や牛乳、惣菜や「はまちゃ(カワラケツメイ)」もある。

 残念なのはやはり店舗数が少ないこと。
 これさえ克服すると市場好きのパラダイスともなりそう。

●本ページは改訂をしていく

食の満足度 ★★★
●食の満足度は、食に関する発見、うまい食材が手に入る度合い。満足度が高いほど★が増える。満点は5つ★
気軽さ ★★★★★
●気軽さは、一般人が入って買い物が出来るかできないか。買い物がしやすいほど★が増える。満点は5つ★
市場の種類/観光市場
住所/かろいち 鳥取市賀露町字西浜1757の1283
http://www.karoichi.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

sakura091010.jpg
●クリックすると拡大

 昨年は慌ただしかった。
 今年はできるだけゆったりした一年でありますように。
 さて、今年の年越しそばは日本そばじゃなくて中華となる。
 八王子総合卸売センター『さくら』のワンタン麺。
 こののワンタン麺はそんじょそこいらにある代物ではない、恐るべしワンタンが主役を張っている正真正銘のワンタン麺。
 そのワンタンの具のうまさに、『さくら』ならではの濃厚なダブルスープ。
 我ながら『さくら』なくして市場生活が送れない身となっているのだから、年越しワンタン麺をついつい食ってしまうのも無理はない。
 しかし暮れのワンタン麺のなんとしみじみうまいことか。

 旨味充分のスープがじわじわと身体に浸透してくる。
 美しい女性に執拗に迫られているかのような快感に身も心も震える。
 ああ、そろそろ初競りの5日ではないか、明日も『さくら』で、新年だからエビそばといきますか。

八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

maruyo081212.jpg
●クリックすると拡大

 築地場外でももっとも目立つところにあり、いつも混んでいるのに倦厭している店がここ。
 立ち食い(椅子もある)なのに最低のかけでも450円。
 かるく天ぷらをのせると700円とか800円する。

 それでも最近の体調から、かなり空腹でも朝は麺類と言うことが多くなっている。
 しかも近くの長崎県漁連に立ち寄りたいので、思わずここでそばをすする。
 天ぷらをキスにして、熱いいっぱい。

 かけそばの場合、汁は濃厚でなければならない。
 関西風ではそばの、汁がらみの悪さから味気なくなる。
 通奏低音のような殷々とした旨味は厚削りのカツオ節。
 そこにさば節、ソウダ節などを混ぜて、かえしで味付けする。

 その醤油濃厚な汁のいっぱいが目の前にある。
 過去に何度も食べて、それほどではない、と思っていたのだが、意外にひとすすりしてうまいなと思う。
 ちなみに、今回の築地は仕事がらみなので、時間に余裕がある。
 初めてゆっくりとすすりこむ『まるよ』のそばなのかも知れない。
 とにかく汁がうまい。
 ちゃんとカツオ節の旨味が感じられるし、醤油・甘みに角がない。
 そばの香りも高く、いい味わいだ。

 立ち食いで、街のそば屋なみの値段だが、これだけうまいのなら赦せるだろう。
 ただし、ここでゆっくりそばを味わえる機会なんてそうそうあるわけがない。

くわしくは、つきじろうさんのブログで
http://tsukijigo.cocolog-nifty.com/blog/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

萩しーまーと

0

 2001年に道の駅としてできたもの。
 JR萩駅ではなく、東萩駅が近い。
 萩漁港を目差して、その前にある。

 一般に道の駅というと観光的な、魅力に欠ける場合が多々ある。
 魅力のない道の駅の多くが食に感心のない人が作ったものだとしたら『萩しーまーと』は対極にある。
 建物は長方形で木で作られた部分が多い。

jounai081212.jpg
●クリックすると拡大

 かなり広いスペースなのに商品が多くて、むしろ狭く感じる。
 海辺にありながら海産物だけでなく、近隣の農産物、海産加工品だけでなく、多種類の加工品が売られている。
 その多種多様であること、また厳選されているところは見事だ。

 場内のレストランは3店舗。
 それぞれ特徴があって、なかなか美味。
 特に冬季のマフグのフルコースなど東京で食べたらいくらとられるかわからない。

ikefugu081212.jpg
●クリックすると拡大
マフグは生け簀で生きている

mafugu081212.jpg
●クリックすると拡大
マフグのフルコースは冬の萩名物ともいえそう

 また生きたものを料理するわけで、この鮮度は萩ならでは。
 残念なのが、気軽さや、豪快さに欠けるところ。
 場内に「えびすや」という野性味溢れる名店があるのだから、その優れた部分を取り入れて欲しい。

ebisuya081212.jpg
●クリックすると拡大
『えびすや』には行列ができる

 場内にある魚屋はまことに優れた店ばかりだ。
 もっとも優れているのは魚・惣菜の『えびすや』だろう。
 このような店舗が日本全国にあれば、どれほど日本の漁業も救われるだろう。
 プロが仕入れに出かけても満足できるだろうし、一般人にも優しい。

sakana081212111.jpg
●クリックすると拡大

sakana081212222.jpg
●クリックすると拡大

 例えば旅人がお土産に刺身を買っても大丈夫なほどにきれいなパッケージング、処理が施されている。
 『萩しーまーと』で目立つ物は、フグの存在だろう。
 マフグ、シロサバフグなどが処理されて状態で売られている。
 またマフグ、イカなどは活魚として場内で泳いでいるのだ。
 この多彩な魚貝類のほとんどは地物、陸送されたものは少ないというのもいい。
 前浜の魚が、ここで見られる、これ以上の幸せはないだろう。

 萩は蒲鉾、天ぷら(薩摩揚げ)でも有名。
 干物も地魚を使った物が豊富にある。

 地の豆腐、調味料、日本酒など、時間を忘れるほどに楽しい空間となっている。

 観光的に作られたものなのに、単に観光目的ではなく、市場としてみても優れているのが『萩しーまーと』だ。
 まだまだ気になるところ、改良点はありそうだが、新しく作り上げる「市場(道の駅)」としてはこれ以上はないだろう。

食の満足度 ★★★★
●食の満足度は、食に関する発見、うまい食材が手に入る度合い。満足度が高いほど★が増える。満点は5つ★
気軽さ ★★★★★
●気軽さは、一般人が入って買い物が出来るかできないか。買い物がしやすいほど★が増える。満点は5つ★
市場の種類/道の駅
住所/萩しーまーと 山口県萩市椿東字北前小畑4160-61
http://www.axis.or.jp/~seamart/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

 旦過市場に来た目的のひとつが「いわしのぬかみそだき」だ。
 市場内の食堂に入って食べるのが最良の方法だろう。
 でも本当にうまい「いわしのぬかみそだき」が食べられるんだろうか?
 踏ん切りがつかないまま、市場を歩いていると、懐かしいケースの並んだお菓子屋さんが目に付いた。

kasiya081212.jpg
●クリックすると拡大

 ボクが子供の頃(1960年代)、お小遣い10円を持たされてお菓子を買い食いする。
 その頃のお菓子の売り方というのが量り売りだったのだ。
 「オバチャンこれ」とお願いすると計りに乗せて10円分か5円分を白い紙袋に入れてくれる。
 そのままのガラスのケースがここにある。
 このお菓子屋さんのお母さんがなんとも親切な方であった。
 「このあたりに、ぬかみそだき食べさせてくれるところありません」ときくと、「たのんであげるから来なさい」と連れて行ってくれたのが『宇佐美』という店だった。

usami0812112222.jpg
●クリックすると拡大

 この店、[100年床ぬかみそだき]と書かれた看板が大仰なので敢えて通り過ぎたのだった、
 でも出てきた女将さんもいたって親切、親しみやすく、「いいですよ」と、いわしのぬかみそだきを発泡トレイにのせて、割り箸までいただいた。

 さて初めて食べる、“いわしのぬかみそだき”は思った以上にぬかみそが感じられないものだった。

usami0812121.jpg
●クリックすると拡大

numamisodaki081212.jpg
●クリックすると拡大

 醤油の甘辛い味付けで、確かにそこに糠の、ざらつきがあるものの酸味も糠味噌臭さもない。
 むしろイワシの煮つけに濃くをつけたようなもの。
 立ちん坊で“ぬかみそだき”を食べていてもつまらない。
 振り向くと酒屋があって、どうやら立ち飲みができそうだ。
 『宇佐美』の女将さんに、「これ持ったままあそこに入ってお酒飲んでもいいでしょうかね?」。
「いいんじゃないですか。聞いてあげましょうか」
 聞いて頂いて、入っていったのが、『宇佐美』の通路反対側にある『赤壁酒店』。
 奥が立ち飲みスペースになっており、ここでコップ酒で“いわしのぬかみそだき”を食べる。
 まことに旦過市場の人は優しいね。

 さて、北九州市小倉は、ぬかみそ漬け作りのさかんなところ。
 ぬかみそのことを古くは「糂汰漬け(じんだづけ)」と呼んでいたようだ。
 「糂汰」という言葉の歴史は「ぬかみそ」という言葉以上に古いものらしく、小倉の「ぬかみそ文化」の歴史はいやが上にも古いことがわかる。
 ぬかみそで野菜などを煮た汁を「糂汰汁」、魚を煮て「糂汰だき」。
 “いわしのぬかみそだき”は「いわしの糂汰だき」だということになる。
 ●詳しくは「ぬかみそ文化交流会」へ

 さて、市場の旅は続くのである。
 旦過市場を軽くもう一回り。
 『大學堂』という不思議な空間を見つけた。
 そこにはコタツがあり、女子大生が二人。
「今日は法律相談をやってます」
 なかなか明るい。

daigakudou081212.jpg
●クリックすると拡大

 ここは北九州市立大学が運営しているもので、大学と一般とのふれあいの場所として面白そうだ。

 こんなところで北九州のことなど聞いてみたい気もするが、時間のない旅なので、慌ただしくモノレール旦過駅を目差す。

●旦過市場歩き終わり

北九州市にぎわいづくり懇話会
http://lets-city.jp/konwakai/index.html
旦過市場
http://www.tangaichiba.jp/
ぬかみそ文化交流会
http://blog.livedoor.jp/jindaoyaji/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

 北九州市役所を出て、また橋を対岸に渡るとほどなく旦過市場が見えてきた。
 とても市場とは思えない入口で、文字だけが目印と言ってもいい。
 手前にあるのが『丸和』とあり、スーパーらしい。
 横断歩道をわたって市場に入っていく。

 この項は北九州の旅としているが、政令指定都市で百万近い人口がある。
 例えば島根県とか徳島県からすると県の人口よりも、北九州市の人口の方が多いのだ。
 その大都市の市街地なのだから林立するビル、街を歩く人の多さなど、とても地方に来ているという思いが浮かんでこない。

irigututia081212.jpg
●クリックすると拡大

 市場に入ると、途端に有機的な匂いがしてくる。
 揚げ物、ぬかみそ、醤油、そして水産物などが混ざった、うまそうな匂いだ。
 思った以上に賑やかで、松本清張が働いていたことがあるという、ちょっと暗いイメージなんてどこにも感じられない。
 魚屋があって、その先にはクジラの専門店。
 九州北部佐賀県呼子では江戸時代以来のクジラ漁が行われていた。
 とったクジラは塩漬けになって九州一円に流通していたわけで、九州北部でのクジラの歴史は古い。
 クジラを売る店が市場の入り口近くにあるというのが、その点でも面白い。

kujira081212.jpg
●クリックすると拡大

kanbannniku081212.jpg
●クリックすると拡大

 かまぼこ屋があり、今回の目的のひとつである「ぬかみそだき」の看板が見られる。
 魚屋は非常に多い。
 店頭に並ぶ鮮魚の種類はそれほど多くないが、鮮度はいい。
 水曜日で卸売市場が休みなのに、これだけ見事な魚があるというのにも驚かされる。
 サンマ、タラバガニ、ブリなどは陸送もの。
 「ひらす(ヒラマサ)」、ウスバハギ、アマダイなどにマダイ、メダイは九州各地近場からだろう。

sakayanaya081212.jpg
●クリックすると拡大

 特徴的なのが近海の小魚類。
 ヒイラギ、クラカケトラギス、メバル、マコガレイ、カサゴ、ショウサイフグ、コモンフグ、トラフグ、ヒラスズキ、アオハタ、イシガキダイ。
 ミルクイ、タイラギ、マダコ、アカガイ、サルボウ、ハマグリ(?)。
 ヨシエビ、アカエビ(トラエビであるかも?)、クルマエビ、ガザミ。

「今日は市場が休みだから、魚が少ない」
 どの店でもこんな断りを言われたが、関東からきた身には、これでも充分魅力的だ。
 カワハギは皮を剥いだ状態である。
 豊前海産と書かれたカキや小魚類がある。
 北九州では「豊前海産」というのは新鮮であることのあかしなのだろうか。
 一軒の店先にカツオを醤油漬けにしたものが売られていた。
 これも面白い。
 シジミは山口県産が多かった。
 島根県からは赤ばい(エゾボラモドキ)が来ているのだけどやけに安い。

 ウナギ屋があり、果物屋、漬物店に果物屋、総菜店も多々ある。

tenpura081212.jpg
●クリックすると拡大
お総菜店が多いのも魅力的だ

turo081212.jpg
●クリックすると拡大

 中央の通りを抜けてそろそろ出口というところに食堂があった。
 その手前を右に折れると川に出てしまう。

kawa081212.jpg
●クリックすると拡大

 この川が大正時代には船着き場ができるほどの水量を誇っていた神嶽川だろうか。
 旦過市場は大正時代、船着き場に揚がるイワシを、売ることで出来たものだという。
 今では小さな川であり、そこに市場の建物がせり出すように建っている。

 その通りを戻り、中央の通路を通り過ぎると、途端に人通りが絶えて、それに抗すかのように万国旗が頭上に交叉する。
 人通りがたえて、突然時代が昭和30年代に後戻りしたような錯覚を思える。

saitou081212.jpg
●クリックすると拡大

 それだけに万国旗の垂れ下がっているのが不思議な雰囲気だ。
 右手に古い看板が並び掲げられている乾物屋。
 棒鱈、焼きあご(ホソトビウオの焼き干し)があるのが印象的。
 瀬戸内海産のいりこ(カタクチイワシの煮干し)は上物である。
 先に進むと、また魚屋さんが並んでいる。
 表通りよりも広い店舗で品揃えも豊富だ。
 肉屋、ホルモン専門店。

 旅の途中ではあるが、買ってみたいものが無数にある。
 我慢に我慢を重ねる胆過市場歩きだ。

●旦過市場歩き続く

北九州市にぎわいづくり懇話会
http://lets-city.jp/konwakai/index.html
旦過市場
http://www.tangaichiba.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

このアーカイブについて

このページには、管理人2009年1月に書いたブログ記事が含まれています。

前のアーカイブは管理人: 2008年12月です。

次のアーカイブは管理人: 2009年2月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。